「東京」は、日本の中心とか、人口過多とか、グルメなまちとか言われていますが、それは本当なのでしょうか?東京事典では、そうした一般化した固定観念にはとらわれない自由な思考や実践を通し、マスメディアには映らないこのまちの面白さを見つけてみなさんに届けます。
本プロジェクトは、2011年〜2013年度まで、東京アートポイント計画の一環として、東京都、東京文化発信プロジェクト室(公益財団法人東京都歴史文化財団)、NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]によって実施され、現在では、AITによって不定期に更新されています。
東京事典のアイディアの源流には、20世紀初頭の芸術運動の一つである、シュルレアリスムに関連する雑誌『ドキュマン』があります。そこに収録された『批評辞典(Critical Dictionary)』は、フランスの思想家ジョルジュ・バタイユが1929年から編集に携わり、「目」や「不定形」など、いずれも西洋近代文明にとっては価値がないとされた語彙と、それにまつわる独自の定義を掲載していました。
バタイユは、この思考実験を「固定観念を打ち破る装置」と捉えていました。つまり、「当たり前」とされていた考えの裏を明かすことで、多くの人々が拠って立っていた文化的な社会基盤をひっくり返そうとしたのです。
東京事典では、この手法を踏襲しながら、現代における思考の冒険者とともに、文化から歴史、経済、暮らし、遊びまで、個々の創造的な視点や経験によって語られる「東京」を浮かび上がらせます。それは、マスメディアなどには脚色されない「いま」の「なまなましい」「東京」を映し出すでしょう。構築されたアーカイブは、東京に住まう人、またそこで表現活動をする人、それを研究や制作の対象にする人にとっての有意義な情報源にもなるでしょう。
アーカイブされた映像の数々から見えるジェスチャー、表情、声、汗など、一人一人の身体性と共に表現される「東京」を、一緒に眺めてみましょう。
東京事典では、代官山のAITルームを会場に、アーティスト、編集者、建築家、ミュージシャン、また一般公募からの参加者(2011、2012年度)やワークショップ参加者が「東京」を象徴するキーワードについて15分間のプレゼンテーションを行い、その映像をウェブ上にアーカイブしました。発表形式に特定のルールはなく、発表者の国籍や年齢も問いません。公開録画終了後、プレゼンテーション映像は、本ウェブサイトとYouTubeチャンネルに収録されます。
2013年度は、東京と時代が交差する「東京事典」という空間がどのようなものかを確認し、その意義と可能性をより多くの人々と分かち合うため、ゲストを迎え、一日限りのラウンドテーブルを行いました。ラウンドテーブルの録画映像は、本ウェブサイトとYouTubeチャンネルで公開しています。
なお今後も、公開録画は不定期に開催していく予定です。
この事典の編纂は、独創的なキーワードが生まれる限り、終わりはありません。